私の年間ベストアルバム 1979年 Lodger アンダーグラウンドへの旅立ち

1979年のベストアルバムを選ぶのに、私がその年にリアルタイムで購入した中から選ぶのと、後から買い揃えたものも含めて1979年にリリースされたアルバムの中から選ぶのとでは、違ってくる。 

者ならデビッド・ボウイーの「ロジャー」だし、後者ならザ・レインコーツのデビューアルバム「ザ・レインコーツ」だ。 このアルバムを購入したのは、ジャパンレコードから出たラフトレードのオムニバスレコード「クリアカット」を買ってレインコーツの存在を知った後だから、1981年頃だと思う。

でも、総合的に振り返るんじゃなくて、発売とほぼ同時に購入したアルバムの中でベストを選びたいのでやっぱり1979年は「ロジャー」だ。

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当時必ず聞いていたNHKのラジオ番組、渋谷陽一のサウンドストリートでこのアルバムが紹介されたのがきっかけだったと思う。 これはイーノと共作の3枚目にあたり、そんなに一般受けする作りじゃなかったし、実質的にも他のアルバムに比べそれほどヒットもしなかったんだけど、 これは私が初めて聴いたデビッド・ボウイーで、イーノのメロディとボウイーの歌声が私の心をガッツリと掴んだ。 

時代によってスタイルが変わるボウイーだけど、 「ロジャー」はポスト・パンク的なアルバムだったと思う。 このタイミングでボウイーに出会えてよかった。 だってここから私はだって、家族が聴いていたクイーンとかビートルズとか王道を行くロックから、パンク、ニューウェイブ、スカ・レゲエ、ポストパンクと、どんどん軌道を外していくのです…。

針を落とすと聞こえてくる曲は「素晴らしき航海」。 ボウイーの成熟した声がゆったり流れてくる。 この曲を聴くと、元気が出てくる。 素晴らしい航海という邦題がついているけれど、歌詞は全然航海とは関係ない。 むしろ、海を渡って侵略を続ける国々を皮肉ってつけたタイトルだと思う。 失われそうな良心をどうにか保って生きていこうよ、って歌だ。

 

「素晴らしい航海」

この素晴らしいとされる航海は
この素晴らしいとされる航海は
衰退すべきだというのに
まだ続けているという事実において
考える

プライドも大事だが
命も同様に大切であるということを
忘れないでほしい

我々は誰かのうつ病とともに生きることを学んでいくが
私は誰かのうつ病とともには生きたくない
しかしどうにか生きている
近代社会といっても
誰もが完ぺきなわけじゃない
世界は流動している
だからといって
むやみやたらにミサイルをとばしていいわけじゃないし
父親のいないクズ人間とも言われたくもない
それは忘れ去られることはない
そうなれば我々は二度と
他人に優しい言葉かけはしなくなるから、そうだろう?

そして、犯罪がはびこるこの世界では
間違った言葉に耳を傾けてさせられる
忠実なのも大切だが
命も同様に大切なことを忘れないでほしい

我々は誰かのうつ病とともに生きることを学んでいくが
私は誰かのうつ病とともには生きたくない
しかしどうにか生きている
でもどんな突発的変動も書き留めておかなければ
民族が一掃されていることも書き留めておかなければ
まだ私はまだ学んでいる途中だが、書き留めておかなければ
そうすれば、忘れられることはない
なぜなら我々は二度と、優しい言葉をかけはしなくなるから、そうだろう?

<Syco訳>

 このアルバムは「レピテション」以外は全部シングルカットされてもいいような、良い曲ばかり。 「レピテション「」(同じことの繰り返し)はタイトル通り、故意に平坦にしたから、つまらなくて当たり前。

ラップっぽいのから、アジアンぽいのから、アフリカの原住民ぽいのまで、アルバム一枚で世界一周する感じ。 旅への賛歌「ムーブ・オン」という曲も入っている。 すべてを投げ出して旅に出たい気持ち、あの頃よりも今のほうが、よ~くわかる。

「ムーブ・オン」

時々
移動せねばという感情に駆られる
それでスーツケースを詰めて
旅に出る
旅に出る

そう、列車に乗るかもしれないし
夜明けとともに船出するかもしれない
彼女もつれていこうか
旅に出るときは
旅に出るときは

どこかで誰かが呼んでいる
困難に陥ったとき
僕はただの旅人となる
ただの思い込みかもしれないけど
世界のどこかは、僕の瞳の色より青い空が
広がっているような気がするんだ

純粋でワイルドな海が
広がっているような気がするんだ


アフリカの眠る部族
ロシアの騎馬民
古都京都の畳の上で
幾夜か過ごしたり

キプロスは僕の島
せっぱ詰まると
どこかそんなところにいる君を
見つけたいと願うんだ
どこかで誰かが呼んでいる
困難に陥ったとき
影のように感じ
木の葉のように流れ
盲人のように躓いて
君を忘れない

 <Syco訳>

このビデオがめっちゃいいので、貼っておく。 Move On!!

www.youtube.com

 

1979年にボウイーを知って、それから、遡ってデビューアルバムまで揃えて、高校時代はボウイーを聴きまくっていた。 一番好きなボウイーのアルバムは「ハンキー・ドリー」。 商業的に成功した「レッツダンス」からは余り聴かなくなった。 私にとってのボウイーは世界を広げてくれたアイドルだった。 アンディ・ウォーホールとかリンゼイ・ケンプなどのアートの世界、バイセクシュアルとかヘロインとかの危ない闇の世界、そんな世界を妄想しながら、田舎の高校生の私は一生懸命バイトして、レコードを買い集めてたんだよな。