BBC2がマイケル・ジャクソンの曲を流さないというニュースについて、思ったこと

今、アメリカで"Leaving Neverland"というドキュメンタリー映画が話題になっている。 有料のチャンネルHBOで、先週の週末から視聴できる。 子供の時、マイケル・ジャクソンから性的虐待を受けたという二人の青年の告白をもとにしたドキュメンタリーだ。
私はマイケル・ジャクソンのファンでもないし、お金を払ってまでドキュメンタリーを見る気はないけれど、この後BBC2がマイケル・ジャクソンの楽曲をラジオで流すのを規制するというニュースを聴いて、複雑な気持ちになった。 ポリティカル・コレクトネス、#me too、に続く、#cancelculture (キャンセル・カルチャー)だよね。 「cancel culture」は日本にはまだ馴染みがないかもしれないけど、著名人が犯罪とかモラルに反したことを犯した場合、その作品までもボイコットすることだ。 

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アーチストの作品が本人の私生活を知ることによって、聞くに堪えられないものに変わったり、嫌いになったりするものなのか。 

私に限っては、自分の好きだった曲が、アーチストのスキャンダルによって、耳にするのも嫌になったなんてことはない。 アーチストがセルアウトしてしまって嫌いになることはよくあるけれど、それはセルアウトした後のレコードが超売れ線の詰まらないものになって、私の好みじゃない音になってしまったから聞かないだけで、好きだった頃の作品は変わらずに好きでヘビロテしてる。

例えば、ジョンレノンが「自分はイエスキリストよりも凄い」という発言をしたとき、大勢のファンが自分の持っているビートルズのレコードを燃やして怒りを表したとか、わけわかんないよ。 

フィル・スペクターが殺人を犯しても、ジェイムス・ブラウンが乱射しても、デビッド・ボウイーがベルリン時代にヒットラーを崇拝してたとしても、好きだった曲が聴けなくなるなんてことは無い。

音楽を好きになる時、その人の人格まで好きになる必要ぜんぜんないし。 それにほとんどのミュージシャンの私生活とかどんな人物とかまで知らないしね。

逆に私生活をめちゃくちゃにしてまで、音楽を作ってくれていることに感謝をするわ。 ストレスやうつ病で酒とドラッグに溺れて、ズタボロになった故に生まれた芸術もあると思う。

シド・ビシャス、プリンス、ジム・モリソン、カート・コバーン、プレスリー、ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリンに負うものがたくさんあると思う。 心の闇があったからこそ、生まれた音かもしれないんだし、幸せな生い立ちで幸せな毎日を送っている奴からは優れた芸術作品は生まれないんだよ。

マイケル・ジャクソンに話は戻るけど、朝のニュースで、性的虐待の被害者の二人がインタビューをされていたのを見たけど、かなり気持ちが悪い話だ。 10歳の男の子にダイヤモンドの指輪を買ってあげて、秘密の結婚式をしたとか、異常な世界だ。 マイケルのレコードに払った自分のお金の一部がこのダイアモンドの指輪に使われていたと思うと、罪悪感や嫌悪感が生まれるのは当然かもしれない。 

でもさ、 芸術作品はそれ自体で評価されなければいけない。 アーチストが犯罪を犯したから、その作品を社会から抹殺するなんてことしたら、人類の文化において大損害だと思う。 

未成年に対して性犯罪を犯したローマン・ポランスキーやウッディ・アレンが映画を作るのをやめていたら、映画界はかなり詰まんなくなっていただろうな。 二人の生産力といったら、半端じゃないし、次々と出てくる映画はすべて秀作だもの。

私の大好きな画家エゴン・シーレが、猥褻ポルノ罪で拘置されたときに、彼のアートが全て処分されていたら…と考えるだけで恐ろしい。

マイケル・ジャクソンは変態よ、もちろん。 それを知って彼の音楽を嫌いになってしまった人がいてもそれは仕方ない。 でも、市場から抹殺はしないでほしい。 これはすべての音楽に対してもね。