ゴーストタウンに潜むお宝

デトロイトは私が初めて住んだアメリカだから、良くも悪くもいろいろな思いがある。   

デトロイトがニュースに出てくると、だいたいは良い話ではない。 市が破産したとか家が1ドルで売られているとか、水道水の質が危険レベルだとか、暗いニュースばっかり。 デトロイトは五大湖の内の4つに囲まれ、水路が発達し、車産業で栄えた中西部の工業都市だと社会科で習うけど、それは過去のことで、今ではアメリカ一位二位を争う犯罪都市で、町からは商業も生産業は去って、もはやゴーストタウンだ。

音楽と言えばみんなが大好きなモータウン・サウンドだ。 モータウンのソウルフルな音は、デトロイトのバンドには何かしら影響を与えていると思うけど、私の見たデトロイトの風景にあの楽しいモータウンのイメージは欠片も無い。 今や空き家や空き倉庫が立ち並び廃墟マニアの宝庫となっているデトロイトはインダストリアルなデトロイトテクノのほうがぴったりくる。 

私が住んでいた90年代のデトロイトは、オルタナ局は深夜を過ぎると朝までテクノを流していたし、クラブに行けばテクノ一色だった。 ブンブン踊ってはいたけど、テクノは全然詳しくないので、この分野については書けない。

私はデトロイトから6キロほど離れた郊外に住んでいた。エミネムのファンなら知っていると思うけど、彼の自伝&自演映画「8マイル」がデトロイトと郊外を隔てる道で、まるでアパルトヘイトの境界線みたいに無法貧困地帯を囲っている。 周りはみんな私に、デトロイトには行くなと口を揃えて言っていた。 生活をしていて、デトロイトに行く用事などないのだけれど、ひとつだけよく足を運んだ場所がある。 それはデトロイト美術館だ。 

デトロイト美術館は、夜になると商売をするお嬢さん達とドラッグ密売人が立つ、世界で一番初めに舗装された道路、ウッドワード通りにある。 かなり大きな美術館で、全部見るには半日以上かかる。 その昔、車産業で潤ってた時代、デトロイトの富裕層が世界の名画を購入しまくったのだ。 

中に入るとぶったまげるぐらい凄い作品がある。 ゴッホやゴーギャンの自画像、ルノアール、モネ、マネ、セザンヌなどの印象派や、マティス、ピカソ、ダリ、カンデンスキー、ルネッサンス、中世の宗教画や、ジャクソン・ポロックなどの現代美術、エジプト、メソポタミアなどの古代遺跡など、なんでもある。 私のお気に入りはブリューゲルのこの絵。 大きくて隅々まで鑑賞できる。

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一番の目玉は中央の大ホールの壁四面に描かれたディエゴ・リベラの壁画だ。 農業と工業に従事する労働者達が力強く描かれ、その隅っこに、意地の悪い顔をしたヘンリー・フォードがいる。 フォードの依頼で描いたのに、社会主義者であるリベラの細やかな反抗心だ。 来るたびに、パワーを充電できるようなホールだった。

ニューヨークのメトロポリタン博物館や、シカゴ美術館と匹敵するぐらいのコレクションがあり、入場料も住民はタダにも関わらず、いつ行ってもガラガラだった。 日本から友だちや家族が来たときは必ず連れて行ってあげたけど、みんな隠れた財宝を見つけたようにビックリする。 デトロイト美術館はガッツリ名画を抱えて、荒れ地にひっそりと建っているのだ。 

デトロイトは観光に来る人はいないけど、廃墟マニアには人気があるらしい。 デトロイト、廃墟、で調べていて、私はこのブログを知った。 日本では有名なブロガーなのかしら。 

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これをきっかけに、この人の0円旅、アメリカ横断、南米横断、アフリカ横断、欧州横断とぜーんぶ見てしまった。 このシリーズ、面白過ぎ! どこでも侵入、どこでも寝れるジョーさんだけれど、デトロイトのホームレスシェルターだけはヤバすぎてパスしているっ! どんだけヤバいんだ? 

 

最後に私の大好きなデトロイトの女子4人組バンド、スランバー・パーティーを一曲。デトロイトでたまたまライブを見て好きになった。 サウンドは当にVUなんだもの。。

youtu.be

このPVはデトロイトで撮られている。 バンドの後方にそびえる大きなビルは旧デトロイト駅です。(旧といってもそのあと新しい駅は建てられていない)。 これは結構有名な廃墟で、ハロウィーンの時期は肝だめしの名所となってたね。 床が抜けて死者が出たというニュースも聞いた。

歌詞がネットで見つからないので、聴きとったサビの部分だけね。

「あなたの成功を祈るわ
今は私が悪かったってわかるから
私も次に進まなきゃ
ブーツをはいて」

 

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