音楽好きが必ずしも踊るのが好きとは限らない。 ライブに行っても、直立不動で真剣に聴いている人をたくさん見る。 私はというと踊るのが大好きだ。 耳だけでは飽き足らず踊らずにはいられない。 だから座席のあるコンサートはほとんど行かない。
若いときはよく踊りに行っていた。 あのころは「クラブ」じゃなくて「ディスコ」だった。 でも私の時代はサタデーナイトフィーバーほど古くはないよ。 ビリー・ジーンとかブルー・マンディーとかで踊っていた。
90年にダンスホールレゲエが出てきたころ、あぁ、こんなリズムで踊れたら楽しいだろうなぁ、なんて思ったけど、もうクラブにいく年齢は過ぎていたので諦めた。 そもそも当時住んでいたデトロイト周辺のクラブはデトロイトテクノ一色だったからダンスホールレゲエのDJがいるクラブがあったかどうかもわからない。
のれる曲とのれない曲は人によって違うだろうけど、私にとってはダンスホールレゲエが究極のダンスリズムのような気がした。 シャギー、シャインヘッド、ビーニーマン、エレファントマン...、 アメリカのラップやヒップホップはあまり聴かないのにどうしてダンスホールレゲエにこんなに惹かれるのか? 決定的に違うのはジャマイカのパトワ語とそのアクセントだ。
たとえばこの"Pon De River Pon De Bank"というタイトル。 曲を聴くと ♪ポンデリバ、ポンデバン♪ に聞こえる。 標準英語に直すと "upon the river, upon the bank" でこれを米国アクセントで声に出していると「ザリバァー」や「ザベーンク」が間延びしてしまってビートにのらない。
この曲のPon De River Pon De Bankの意味は、ビデオでみんなが踊っている、片足を上げて川を飛び越えるようなダンスの動きの名前らしい。 「ポンデリバで踊ろうぜ」、みたいな歌詞であまり深い意味はない。
スペイン語を初めてからよくレゲトンを聴くようになった。 レゲトンはプエルトリコ人がお隣ジャマイカのダンスホールレゲエをスペイン語で歌い始めたのが始まりだ。 スペイン語はパトワと響きが似てる。 英語のような長母音が無いからかもしれない。 でもスペイン語はパトワよりもエモーショナルなのよ。 ロマンス語のパワーかしら。
キューバ人のオスマニ・ガルシアの「タクシー」。 オリジナルはチャカ・デマスのレゲエだけど、レゲトンの方がじわじわ攻めてくる。
そして、たどり着いたのはデンボウのリズム。 英語圏には無いバイブだな。 デンボウはドミニカ共和国から始まったんだって。 カリブのアフロビートとラテンのリズムとエレクトロニカが合わさって最強になってる。
パトワやスペイン語の響きはパーカッションで英語はどちらかと言えば弦楽器の響きだと思う。
じゃぁ日本語は? 響きはスペイン語と似ているけど、ただね、スペイン語は単語のアクセントの位置がほぼ統一しているのね。 大抵最後から2番目の音節に来る。 だから普通に話していてもリズミカルに聞こえる。 でも日本語はそういう決まりがないからリズムが生まれない。 だから日本語はラップやヒップホップやレゲエには向かないと思うな。 って、日本のポップやロックについて何も知らないおまえが言うな、って話ですが。



