「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」を読んだよ

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久しぶりに日本の本について書く。

ブレイディみかこさんのブログはもう15年ぐらい前から読んでいて、同年代、パンクに触発されてイギリスに渡る、実家がゴリゴリの労働者階級、など、いろいろ共通するところがあって、以前なされていたブログにコメントを入れたり、お返事を頂いたりもした。

本を何冊も出されたことは知っていたけど、アメリカにいると、日本の本の購入は難しく、オンラインで彼女のブログやコラムを読めるからイイや、って思ってた。でもこの「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」は凄く話題になったので、冬に日本に行った時に中古で購入した。

これは彼女の息子の中学校と、子供のアイデンティティに関するエッセイで、自ずと私の娘が中学校だったころと比べてしまう。 娘も白人とアジア人のミックスだけど、イギリスとアメリカでは、似ているところもあり違うところもあり。

まず驚くのは、みかこさんはイギリスのブライトンで、アジア人だから中学生から頻繁に春巻きババぁとかチンクとか罵声をあびせられるということ。 私はデトロイトのブルーカラー地区に住んでいたこともあるし、今は南部の田舎町に住んでいるけど、ガキからそんなこと言われたことは一度もないし、ガキ連中が大人に向かってそんなことを言ってるのを聞いたこともない。  

私が差別的な言葉を浴びたのは、運転していて、誰かの車の前に割り込んでしまった時とか、クレームをつけたら逆切れされたとか、そういう時だ。 からかい半分で言われたことはまずない。 アメリカの方がイギリスよりも、移民が多く多民族国家だから、アジア人なんて珍しくもないのかもしれないし、学校でしっかり教育されているのかもしれない。 

この本は、みかこさんの息子さんが中学校選びをするところから始まる。 レベルが高い優秀な移民の子息が集まるカソリックの学校に行くか、 労働者階級の白人が多い荒れている公立中学にいくか。 学校見学をしたら、公立中学の方が学校の方針や校長先生が魅力的に感じて、元底辺中学校(みかこさんはこう呼ぶ)に決めるのだ。 

アメリカでも 公立の学校は自治体の税金と寄付で運営してるので、地区により全然設備も教育者の質も全然違う。 私も娘が学校に通う年代は、ランクが上の方の学校区に引っ越し、娘が大学に行くと同時に、家を売り払って田舎に引っ越した。

私は娘から学校で人種差別的な悪口を言われたとか聞いたこと無い。 娘が私に話さないだけかもしれないけれど、でも娘の学校は3分の1ぐらいは有色人種で、特にインド人、韓国人、中国人が多い。 娘の友だちはなぜか、インド人ばっかだったな。 白人の友だちがあまりいなかったのは、多分クラスが違ったから。 娘は理系で、マーチングバンドやオーケストラに入ったりする、要するにナードなわけよ。 そうすると、学力や選択でクラスが分かれるから必然的に友達はまじめで勉強ができるインド系や韓国系になる。 (いや、白人がバカと言ってるわけじゃないのよ、アジア系の親は子供に勉強をさせ過ぎるのよ。)

みかこさんの本に、片親が日本人だと、思春期になると英語に訛りのある日本人の母親を友だちの前では隠すようになる、とあるが、うちはその逆で、娘は自分の友だちが来ると私と日本語を話したがる。 自分は日本語話せるんだぞ、ってのを見せたいようだ。 その代わり、私の日本人の仲間の前では、日本語を話そうとしない。下手なのがバレるからね。 そんなわけで、娘に関しては、アイデンティティーで悩んでいるような感じはぜんぜんなかった。 あ、でも日本の大学に半年留学してた時、ハーフと呼ばれることにキレてたな。 

さて、日本でこの本はどんなふうに読まれているのだろう。 「一生モノの課題図書」という帯がついているけど、日本のいじめ問題と照らし合わせられるのかなぁ。 日本はちょっと空気が読めない子とか、見てくれが悪い子とかをターゲットにいじめが起きるけど、この本の舞台はもっと経済的格差とか、ナショナリズムとか人種とか、そういう社会全体の縮図がいじめに現れていて、日本のとはちょっと違う気がする。

みかこさんの息子くんは、とってもやさしくて、差別する側にも差別される側にも同情てしまうし、賢いし、正義感もあるし、お母さんに何でも話すし、ほんとうに、こんな息子くん、私も欲しかった。 たぶん、この母子像と、時々登場してとぼけたことを言う父ちゃんに、多くの人が感動したんじゃないかと思う。

いや、それにしても知らないクソガキから、ファッキン・チンクとか春巻きババぁなんて呼ばれるところに、私だったら住めるかなぁ。 みかこさん、たくましいです。