天国よりも奇なり

冬休みにテキサスから娘ちゃんが戻ってきた。 彼女はルームメートと一緒にカルト映画や古いヨーロッパ映画が満載のストリーミングサービス”Criterion Collection"をサブスクしたというので、どれどれ、カルト映画好きの母のチョイスで今夜は映画を見よーぜ、ということになった。

このストリーミングチャンネルは私が大好きだったゴダールやベイルマンの作品もたくさんあって、この休みをかけてヌーベルバーグマラソンをしたいくらいだったんだけど、いやいや、独りで突っ走ってはいけない。 娘ちゃんはスラッカー映画が好きなんで、そんなら80年代のスラッカーの代表選手、ジム・ジャームッシュだ! 「ストレンジャー・ザン・パラダイス」これに決まりだ!

当時この映画はサブカル好きにはマストな映画だった。 私はそれまではアメリカ映画と言ったらロッキーとかE.T.とか「全米が泣いた」映画しか知らなかったから、「全米」と共に泣くことが出来ない自分は、アメリカ映画はホラー以外はあまり興味が湧かなかった。 でも「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は徹底したミニマリズムと、完璧な間の取り方で目から鱗だった。 たぶん私の生涯見た映画のベスト10に入ると思う。

それはこれまでハリウッド映画で見せられてきたアメリカとは真逆だった。 最初から最後まで無味乾燥なアメリカの風景が続く。 食べ物は不味そうだし、町は寂れて、リゾートは閑散とし、人は見るからに詰まらなそうだし…。

でも、アメリカに来て分かった。 「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は現実だ。 少なくとも私の日常はそんなものだ。  

娘はというと、映画の最後の頃には寝落ちしてた。

 

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