年間ベストアルバム 1999年 ”When the Pawn... ” 歩兵は強いんだ…

f:id:sycoB:20220115103258j:plain

洋楽を聴き始めた1978年から一年単位でベストアルバムを選んできたけど、1998年は一枚もアルバムを買っていなかった。 娘が生まれた翌年だから育児に忙しくて、あまり音楽を聴かなかったのかな。 なので1998年は飛び越して1999年に行く。

初めて聴いたフィオナ・アップルの曲は「クリミナル」だった。 ラジオからよく流れていた。 貫禄のあるボーカルだったからプロモビデオを見たら意外だった。 まだ十代のフィオナは複数の男とセックスした前後の下着姿や半裸、酒の空き瓶、大きなクマをつくりやせこけた身体はクスリの乱用をほのめかす。 

なんでこんな売り方をするんだろう? こんなのを10代の若者達がカッコイイと思ったらイヤだな、ってアラサーの私は思っちゃった。

でも、その後フィオナはこのビデオでMTVアワードの賞をもらっちゃって、授賞式に「この世界はウソだらけ(bullshit)だから、私たちがやってることとか、着ている服がカッコいいとか思って真似しないでね。 自分自身に忠実になって欲しい(Go with yourself)。」と宣言している。 賞をもらっておいて、あからさまにウソだらけとぶっ放すって凄い度胸だ。 ビデオが相当不本意だったことが予想がつく。 その後もフィオナの音楽業界に対する不信感は延々と続く。    

このフィオナのセカンドはデビューアルバムよりも心なしかポップになっている。 アルバムタイトルがなんで「...」で終わってるかというと、ほんとはこの後850文字も続くのだ! お店でこのアルバムを捜す時、「じゅげむ」のように「When the pawn hits the conflicts he thinks like a king What he knows throws the blows when he goes to the fight And he'll win the whole thing 'fore he enters the ring There's no body to batter when your mind is your might So when you go solo, you hold your own hand And remember that depth is the greatest of heights And if you know where you stand, then you know where to land And if you fall it won't matter, cuz you'll know that you're right ありますか」って言わなきゃいけないね。 タイトルを一言でいうなら「チェスの歩兵は実は強いんだ」ってことなんだけど。 

歩兵とはもちろん自身のことだろう。 彼女の曲は常に攻めと守りの戦場だ。 病んでいるようでもパワーが凄い。 ベッツィー・スミスを思わせる太いボーカルがじわじわと来る。 聴けば聴くほど味が出るんだ。 するめイカのようなミュージックだ。 そしてフィオナの戦いは続く。

 

群を抜いてカッコいい「フルスピードで走って」という曲

Fast As You Can 

私は野獣を早く受け入れてしまった
彼の首に両手を掛けずにはいられない
いつも争う、それでもまだ
ダーリン、あなたはとでもやさしい
私が狂っていると思っているのね
どれだけ頭がおかしいと思ってるの?
少しのことじゃ動揺しないと言うあなただから
私から去りはしないだろうけど、でも
あなたが去ることをどこかで願っている私
フルスピードで走って、私から自由になって
フルスピードで逃げて

あなたの腕の中では柔らかかもしれないけど
すぐに私は争いに飢える
ぜったいそしてあなたに勝たせない
私の小さな口から、
あなたを人間不信に至らせるような言葉が飛び出る
だからあなたの皮膚から浸透して
心臓を探る私を捕えたいのなら
フルスピードで走って、私を掻き消して自由になって
フルスピードで走って

時々私は頭がフリーズしてしまうけど
でもたいていは大丈夫
それに気持ちを高めてもらう場所に行くし
そうでなきゃ、疑問や過去の中に溺れてしまう


それが徳というなら、私はあなたの女になるわ
そして、あなたはもっとクスリを分けてくれる
わかった、あなたのペットになるわよ
それが徳とあなたが言うなら
だって私は疑問を持つことに疲れたの
なぜという言葉で窒息しそう
もう少し答えの方が欲しい

私は野獣を受け入れて、そして
それを許そうとまでしたけど、
許すのは早すぎた だから、
何度も何度も何度も争うの
そしてもう少しだけの間は、
生暖かい風に身を任せ、
愚痴ったり、不毛な土地のせいにしたりするの
でもあなたがなにかいい考えが浮かんでも
黙っててね、私はその中で花を咲かせるから


フルスピードで走って ベイビー、ただ私を見守って
私は出ていくから
フルスピードで走って、もう手遅れかもしれないけど
フルスピードで走って、私と距離を離して
これはもう軌道に任せて
フルスピードで走って
フルスピードで走って
フルスピードで走って
フルスピードで走って

<syco訳>

youtu.be

 

子供の子守唄に歌える大好きな曲をもう一つ。

Paper Bag

私は空を見つめていた、星を捜して
なにか願いをかけようか、みたいな…
男の子のことなんかを考えて
気持ちを紛らわそうとしていた
でも現実は望みがないことを知っていた

でもそれから鳩がすーっと降りてきて
希望が芽生えたと一瞬思った
手に届くところまでやって来て
近づいてよく見たら破けた穴がある
鳥だと思ったそれはただの紙袋だった

飢えは苦しい、彼が恋しくて溜まらない、死にそうだ
わかってる、私はぐちゃぐちゃで彼はそれを片付ける気もない
私は手を引っ込める、だって両手は震えて掴むことも出来ないから
飢えは苦しい、でも愛の代償が大きい時は飢えるしかない


そして今日、また無我夢中で這い上がる岩を捜していた
わずかな希望を捜していた
恋人が言った、帰るって、私にキスはできないって
キスができないって向き合うことができないと
ちょっと気分が悪くなった、誤解されている気がするの
お願い、愛を注いで欲しいの ここが空っぽなの
彼は言った、それはきみが思っているだけだと、
私は言った、すべてが私の思ってることでしょ? でも理解してくれなかった
彼は大人だと思ったけど、やっぱりまだ子供だった


飢えは苦しい、彼が恋しくて溜まらない、苦し過ぎる
わかってる、私はぐちゃぐちゃで彼はそれを片付ける気もない
私は手を引っ込める、だって両手は震えて掴むことも出来ないから
飢えは苦しい、でも愛の代償が大きい時は飢えるしかない
<syco訳>

youtu.be

3;15の歌い終わるところのフィオナの表情がたまらん!

f:id:sycoB:20220115100805p:plain