世界の各地に「日本語補習学校」があることを知っているだろうか。
駐在でアメリカの僻地にとばされた一家のご子息でも、土曜日になれば文科省から配られる教科書で、国語と算数を日本に住む子供と同じペースで勉強できるのだ。 イヤ、勉強しなきゃいけないのだ。
現地の子供は土曜日にはスポーツしたり、誕生会に行ったりしてるのに、日本人の子供は日本の学校の一週間分を習うのだ。 さらに宿題もたんまりもらってくる。 私が子供だったら地獄。 しかし、アメリカに来たばかりの子供にとっては、日本語を話せる友達に会える癒しの場でもあるらしい。
私は日本語補習校で中学数学を教えたことがある。 こんな私でも先生と呼ばれてるのだから、常に先生が足りないのは分かると思う。 講師はみんな、知り合いから頼まれて仕方なく引き受けるというパターンだ。 もちろん教員の資格などいらない。
そしてこの度また、中学数学担当の先生が日本に一時帰国するというので、6週間ほど臨時でやってくれと頼まれた。 まぁ、コロナで週末はどこに出かけないし、やってやろうじゃないか。 中二と中三の図形の証明は私が一番好きな単元だし、久しぶりにボーイズ&ガールズと交流できるのもちょっと楽しみだな。
なのにいきなりノースキャロライナに積雪、凍結警報が出され、運転は危険と判断された。 コロナ以前は、わ~い、雪で学校が休みだ~、雪合戦しようぜ、雪だるま作ろうぜ、ってことになるんだけど今は違う。 オンライン授業という選択技が出来たのだ。
前日の金曜日に校長から電話が来て、いきなりオンライン授業をやってくれって!
いったいどうやって? 他の先生は去年の一学期までオンライン授業をやっていたからデジタル教科書や板書を映し出すカメラなどはすでに家にあるらしいけど、私はアナログの教科書2冊しか受け取っていない。
「校長先生、私、できませーん!」
「いや、できますよ、初めの頃は他の先生方もデジタル教科書が無くて、板書を紙に書いてカメラの前に掲げてましたから。」 と校長。
既に書いたものを掲げるなら、教科書を開いて掲げるのと同じだ。 板書は口頭で説明しながらそれに沿って図や要点を書くから必要なんです、と私がいくら言っても、
「お願いしますよ、他に方法はないんです」の一点張り
中二、中三の数学を休みにしたらどうですか。 以前は雪だったら休校になっていたじゃないですか。
「それがコロナは悪いところばかりじゃないってことですね。 雪が降っても子供たちは授業が受けられるんですから。 ハハハ...」 ハハハじゃないだろう。
でも子供たちは雪の日の休校は喜びますよ、と私
「でも親御さんたちは授業を望んでますから」
あーぁ。結局そこか。 日本語補習校は地元の父兄の運営でやっていて、休校は学校が決めるのではなく、父兄からなる運営委員会で決まる。 校長はその間に挟まれる調整役でしかない。哀れ、校長。
わかりました、でもたぶんめちゃくちゃになりますよ、と私。
「大丈夫です。 来週の対面授業でフォローすればいいことです。」
そんなら、全部まとめて次の週にやりたいよ、 一回目の授業がオンラインでグダグダだったら、私の第一印象最悪じゃないか。 ほんとうにバックレてやろうかな、って思ったけど、やっぱりそこが海外の小さな日本人のコミュニティーなんだよな。 お願いしますと頭を下げられると断れないんだよ。 みんな知り合いばっかりだからな。
私は電話を切ったあとすぐに板書が書けるアプリを捜しDLして、タッチペンで一、二時間、板書の練習をしたよ。 だってカメラの前で紙芝居なんてしたくないから。
そして当日のオンライン授業デビューは...。
思った通りグダグダ~。 板書に書きこんでから子供たちのモニターに映るまでのタイムラグが長いことを想定してなかった! 1,2分かかっている。 ポインターもシンクロしない。 Bを指している時にモニターはまだAを指している。 次の問題の図形を書いているのに、前の問題の図形のままだし。
アメリカはプライバシーの侵害から、ビデオカメラをオンにすることを強制できない。 だからほとんどの子供はオフにしてるから、どんな反応してるかもわからない。
そこまでして授業を強行する必要があるか。
雪の日には、子供に外で遊ばせてやれよ。 ノースキャロライナに積雪する日なんて、めったにないんだぜ。
オマケ、4コマ。酷い姉だった。↓↓